危なかった。
先月一週間ほど「サルバドール・ダリ」に会いにスペインへ行ってきた。
会うと言っても、もうこの世にイナイ人なので彼の住んでいた家と、
彼自身の手による彼の美術館を訪ねた。
若い頃は余り惹かれなかったダリだったが、
昨年暮れ、東京国立新美術館の「ダリ展」を観て、
彼を急に知りたくなった。
本年2017年は、20年来の私のパフォーマンス「HAIKAI」を4本立て続けに行う。
昨年11月、「さんせう太夫」が終わると同時に、
今年の「HAIKAI」に向けてスイッチがパチっと入る。
HAIKAI中、私の脳内はダリの絵にある溶けた時計みたいに、
時間が「タラーーーーン」と伸びていく感じになる。
現実がハガレ落ち、得体のしれぬ普段とは違う自分になる。
それがダリの絵の中の人物のようなのだ。
そういう訳で、急にダリに会いたくなり、
地中海フランス国境近くのポルト・リガト、何もない入江に建つ、
最愛の妻「ガラ」と暮らし仕事をした、
たぶん最も幸せな時を過ごしたであろう、ダリの「脳内ジオラマ」みたいな家と、
彼の生まれたカルダスの「ダリ劇場美術館」(1974年彼70歳の時開館)、
かつて劇場だった、ダリ自身の手によって作られたダリ王国のような建物を訪れた。
ピンポイントの目的でピンポイントの場所を訪れ、
ダリに会えはしないけれど、「モノ作りのオモシロサ」「モノ作りに熱中する楽しさ」、
ビシバシと伝わってきました。
願わくば私もあんな風に芝居作りに挑みたいと思う。
空の長旅は疲れたけど、
「イイゾイイゾ、ワカルワカル、ソーダソーダ」の連続でした。
あ、そうだ!
文の最初に「危なかった」と書いた。
今回の旅は格安にして「ダリゆかりの地を巡る7日間の旅」という、
私にしては願ったり叶ったりの嬉しいツアーだったんだけど、
その旅行会社が「テルミクラブ」。
帰国して一週間後、ニュースで倒産を知ってビックリ。
いいホテル、うまい食事、親切なガイドといたれりつくせりの良い旅だったので、
なおさら「エッ!」だった。
ひょっとしたら現地でオロオロする所だったかも知れぬ。
ダリの脳内には迷い込みたいが、地球の反対側で迷うのは嬉しくない。
ダリの旅は「危なかった」で終わり、ダリのイタズラだったのかも知れぬ。