日々是々日記 原智彦の「手前味噌」

お芝居のこと、お祭りのこと、大須のこと、日々思う事をポツリポツリと書かせていただきます。
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[117]ケイコが好き
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    パンク歌舞伎のオーディションで初めて参加する人20名。
    8月よりケイコ開始。
    なんでもそうだが、最初が肝心。
    脱力、股割り、スリ足、特にスリ足は能楽堂の舞台に欠かせない。
    歌舞伎芝居40年の私も「スリ足に始まりスリ足に終わる。」
    一番大切なケイコだ。





    並んでパンク歌舞伎に必要なのが立廻り。
    殺し合い、傷つけあう場面の振り。
    見てくれが派手で音楽と絡み心地よい。
    汗みどろの役者たちの「全力出しきりスカッと感」が客に迫る。
    普段の能楽堂では味わうことができない。
    爆発開放のエネルギーの渦巻を体感できるのがイイのだ。

    ケイコ始めはけっこうキツイ。
    汗だく、息がハアハアゼイゼイ。
    30分に1回は給水タイム。
    5ヶ月×4週間×6時間=360時間。
    ケイコの延べ時間だ。
    これだけみっちりやると、芝居が終わる頃には股割りスクワット踵上げが300回はできるようになる。
    本当である。
    最初は30回で足がブルブルガクガクの人が、である。
    相撲の四股みたいなものでケイコの中心。
    私の芝居に3回も参加すると、
    皆500回股割りスクワットを何事もないようにこなしている。

    歌舞伎の立廻りは様式的で舞踊に近い所がある。
    裏に音楽が流れたり、付け打ちの拍子木の音が入ったりして、
    実際の殺し合いはあっという間に勝負が決するところを、
    何千倍もの時間をかけて見せる。
    生死のやりとりを殊更に引き伸ばし拡大し人の心を魅了する。
    私はかつてヨーロッパの国々で「マクベス」「リア王」等を、
    ロック音楽と歌舞伎芝居で何度も上演したが、
    戦闘シーンの立廻りは「ファイティングダンス」と呼ばれ珍しがられた。
    この日本独自の大げさな一見不自然な演技術は、
    ただ見かけのオモシロサだけに生まれたものではないと思っている。
    その一太刀一太刀に二人の心のキャッチボールがある。
    無言の対話なのだ。
    私の芝居には立廻りシーンは必ずと言っていいほどある。
    見世物的で装飾過多な振りの内に、
    気持ちを、心をどれだけ込められるか、
    心の色合いをどれだけ表現できるか。
    寒くなる頃には見えてくるのかな?
    今はただ激しいケイコに体を痛めぬよう、怪我をしないよう、体の作り方、こなし方のケイコ。
    一番大切なケイコの時なのだ。

    立廻り、踊りのケイコは皆本当にオモシロイらしい。
    本番近く10月11月頃になると、所定の稽古日以外に「自主練習」と銘打って、
    白川公園や若宮通高架下でのケイコも始まる。
    12月に入って本番直前の夜のケイコは寒くて厳しい。
    風邪でも引いては、と私の「夜の自主練禁止令」が出る。

    ケイコのオモシロイ芝居は必ず人が来る。
    ケイコが好きな人の稽古場はオモシロイ。
    だって本当に変な事したり、本当に泣く人がいるんだから。
    私はケイコが好きだ。
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